それぞれの道を



突然届いた、朗報ともいえるメール。


【ソロでコンサートの話がきた】


驚きはしたけれど、
それは確かにあいつが願っていた事だったから。

自分と周りの希望が違い過ぎて
外れすぎないようにしていたあいつが、
『誰かのため』でなく
『自分のため』に言葉にするようになった事だったから。

実際それは、彼が望む通りの
『小さな会場』ではないかもしれないけれど。

それでも、
好きな事が、やりたいと願った事が
出来る事ほど、
嬉しい事はないかずだから。

一言だけ返そうとして、途中でもう一文付け加えた。







確かに、ライブの話は嬉しかった。

でも、『今』『この規模の会場』で『独り』なのは、
不安を通り越して恐怖に近い感情が湧いてくる。

あいつに何かを言って欲しかったのか、
気が付くとメールを送っていた。

返ってきた言葉は・・・。


【おめでとう。1人じゃ大変やろうけど、お互い精一杯ステージ立とうな】


詳しい事は何も訊いてこない。

ただ、『おめでとう』と。

無責任な励ましの言葉もない。

ただ、『今』の『精一杯』を。

候補に上がっていると告げられた会場は、
どれも今まで『2人』で築いたものを披露してきた場所で。

例え、今回『1人』でも、『独り』ではないのだと。

何の変哲も飾りもない、短い言葉に救われて。

このステージを終えた時には
自分の中に残る『何か』があるだろうと。

自分も、先を見据えて進む決意を固めた。









『同じ』道を、『同じ』速度で、『同じ』方向に

進んでいると思っていたけれど。

気付けばそれは、

1人1人どこかで選んできた全く別の道で。


寂しくないと言えば嘘になるけれど、

それでもちゃんと、お互いの姿は今も見えているから。


それぞれの道を、自分の足で立って進みながら。

これからも、お互い魅詰め、進み続ける。






言い訳
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