理由は解らない。ただ、『何か』を吐き出したくてたまらない。

≪何を吐き出したいの?≫

頭の中で声がするけど、自分でもそれが何なのかまったく解らない。

(『何か』が解れば楽になれる?)

≪それは自分次第よ≫

何が苦しいのか解らなくて。でも、苦しいのから解放されたくて。
いつものように頼れる人は誰も居なくて、気付いたら息する事を放棄してた。
ビックリして、急いで空気を吸うと、咽(むせ)と一緒に涙まで溢れてきた。

ただ苦しみが増えただけ。
何も状況は変わらない。
ただ、『何か』の変わりに『涙』がずっと出てくれるだけ。
『何か』の変わりに出てくれる『涙』が少しでもあたしを楽にしてくれればいいのに・・・


――― コンコン
ドアがノックされる音がして、よく知った人が入ってくる気配がする。
1人ではなく、複数の。
布団越しに包まれて、頭をそっと撫でられた。

「涙は浄化作用があるんやで。とにかく泣いとき」

少し離れたところからの優しい声に、ますます涙は止まらなくなる。

「お兄ちゃ〜ん」

自分を包んでくれていた人にしがみついて、もう1人の言葉通り、遠慮なく泣いた。


次ぎの日。朝起きると、夜程の息苦しさはなくなってた。
ただ、やっぱり理由は解らないまま。

お兄の優しい声とお兄ちゃんの全部を包んでくれるような温もり。浄化作用があるという涙。
何があの苦しさを和らげてくれたのかもわからない。
結局。
何もかも解らないまま、あたしは日常に戻っていく。


「おはよ〜!」




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