12月も半ばになり、ちらほら雪が降る日も出てくる頃。
もう街はクリスマス一色です。

人々は陽気に浮かれ、
大人達は好きな人と過ごす1日に
子供達は貰う事の出来るプレゼントに思いを馳せています。

そして、勿論、彼等も例外ではないようです。



「こうちゃん、クリスマス、なにほしい?」
「え〜・・・、ぼく、べつにない、・・・かなぁ」
「ないん?」
「うん〜・・。つよしは?」
「ぼく、プレゼントよりサンタさんにあいたい!」
「はぁ?おるわけないやん、サンタなんか」
「なんで!?ぜったいおる!まいとし、プレゼントくれるやん」
「あほやなぁ、あれはサンタさんちゃう、おまえのおやや」
「ちゃう!なんでそんないじわるいうん?」
「いじわるちゃう。ほんとのことやもん」
「サンタさんはぜったいおる・・・」
「あっ、もう、なくなやぁ。わかった、わかった。おることにしたる」
「そんななげやりに・・・」
「ええやん、おるいうてんねんから。もうこのはなしはおしまい!」
「・・・・・」
「はよ、なきやみ」
「・・・うん」






そんな会話から10日程経ち、今日はイヴ当日です。
例年通り、クリスマスの飾りつけがされ、手作りの料理がテーブルに並ぶ剛の家には、
堂本家2家族が集まっています。



「こうちゃん、ケーキおいしいなぁv」
「うん〜・・・・・、ぼくもうええ」
「これもあかん?まだあまいんや」
「というか・・・あんまたべたない」
「ほかのんも?」
「うん」
「コーラばっかりのんでたら、またおばちゃんにおこられるで?」
「きょうはだいじょうぶやもん。おかあさんこっちみてへんから」
「・・・やったら、きょうおそくまでおきててもバレへんかな?」
「なんで?なんかすんの?つよし」
「サンタさんにあいたい、いうたやん?くるまでおきてんねん」
「サンタはこん、いうたやん」
「ぜったい、くる!こうちゃんもおきとかん?いっしょにあおうや」
「え〜・・・・」
「なっ!」
「・・・わかった。でも、じぶんとちゅうでねるなよ」
「もちろん!たのしみやなぁ♪」



「剛、光ちゃん、そろそろ寝なさい。お姉ちゃんたち、部屋行ったで」
「「はーい」」

夜も8時を過ぎると、子供達はそれぞれ部屋に移動させられます。
ちゃんとベッドに入ったかまで確かめられるのは、勿論下の2人だけですが。

「はい、じゃ、2人ともおやすみなさい」
「「おやすみなさーい」」

母親達が部屋を出て行っても、2人が寝る様子は全くありません。
当然、理由は・・・

「なぁ、こうちゃん、サンタさんってなんじごろくるんかな?」
「え〜・・・わからん。よなかちゃう?でも、ぼくらおきてたらこん、おもうわ」
「そうなん!?やったら、ねたふりしとかなあかんな」
「そやな。じゃあ、しゃべらんと、め、つむっとこ」
「うん」

幼い2人が布団に入って目を瞑った状態でそうそう長く起きていられる訳がありません。
案の定、30分後には

「「くぅ〜〜〜・・・」」

剛の部屋からは2人の寝息が聞こえてきました。
全く起きそうな気配がないまま時間はゆっくり流れていきます。



いつもより騒いだ子供なら確実にもう寝てしまっただろうという11時。
そっと部屋を覗く4つの影があります。
2人の両親がそれぞれの子供の枕許にプレゼントを置きにやって来たのです。

「ちゃんと寝とる?」
「うん、大丈夫」

2人を起こさないよう、そっと枕許にある大きな靴下の中に入れて出て行きました。
勿論、そんなこと、全く気が付いていない2人です。



「おしっこ・・・」

夜中、トイレに行きたくなった剛が目を覚ましました。
が、1人で真っ暗な廊下を歩いて行く勇気はありません。

「こうちゃん・・トイレいっしょにいって・・・」

隣で眠っている光一を起こし、2人で手を繋いで部屋を出ます。

「つよ・・さむい・・・」
「うん・・・。あっ!さむいはずや・・。こうちゃん、ほら、まどのそと」
「え・・・あっ・・・ゆきや〜・・」
「キレイやなぁ。あした、つもるかな?」
「どやろ?つもったらええなぁ・・」
「なぁ。・・・・なぁ、あれ、なん?」
「どれ?」
「ほら、あっち。むこうから、なんかちかづいてきてへん?」
「え〜・・・・ああ、なんか・・・」

最初、小さな塊だったそれは、段々自分達の方に近付いてきます。
少しづつ、少しづつ、『それ』は形を成してきて、その形を表してきました。
『それ』をはっきりと目で捕らえる事が出来た瞬間、

「サンタや〜!」

剛は窓を開けて叫んでしまいました。
これにビックリしたのはサンタクロースです。
驚きのあまり、つい、ソリを止めてしまいました。

「えっと〜・・・君は、剛くん、かな?堂本剛くん」
「なんでぼくのなまえしっとんの!?」
「もちろん、サンタクロースだからじゃよ」
「サンタクロース・・・」
「そうじゃよ、堂本光一くん」
「うそや!それに、なんでそらとんでんねん!ぜったい、おかしい・・・ゆめにきまっとる・・・」
「夢じゃないんだけどねぇ。このトナカイはな、空を飛べる種類なんじゃよ。みんなが知ってる子等とはちょっと違うんじゃよ」
「ふーん、ってことは、なんかちからあったりするわけちゃうんや。やったら、なんでぼくらのことしってはるん?」
「それは内緒じゃよ」
「ケチ・・・」
「こうちゃん!サンタさんにしつれいやろ」
「・・・やって、へんやもん」
「なんで?サンタさんなんやからふつうやん」
「えほんとかみたいなサンタさんなんかいてへんもん」
「確かに、わしだけで子供達全員にプレゼントを配るのは難しいことじゃよ」
「え・・・」
「だから、毎年誰かに手伝って貰うことにしておる。今年は君達のようじゃ」
「「ぼくら!?」」
「そうじゃよ。一緒に頑張ってもらえんかな?」
「ええよ!」
「・・・さむない?」
「これを着れば大丈夫じゃ」
「サンタさんの服?」
「ああ。子供用のな」
「・・・ほんまや、さむくない・・」
「ぼくらなにしたらええの?サンタさん!」
「一緒にソリで移動して、わしが言う家にプレゼントを2人で置いて来て欲しいんじゃ。いいかな?」
「はーい!」
「・・・・・」
「いいかの?光一くん」
「・・・うん」
「ありがとう」

サンタクロースに頭を撫でられ、下を向いてしまった光一の顔は嬉しそうに微笑んでいました。



「すっごいたかい!つよし、きれーやなぁ・・・」
「・・・・・・」
「どうしたん?」
「・・・こんなコワイとおもわんかった」
「あっひゃっひゃっひゃ。さっきまでのげんきさ、どうしたん〜」
「剛くん、ちょっと目瞑ってみてくれるかの」
「うん」

剛が目を閉じると、サンタクロースは左手で目を覆い、右手で頭を優しく2・3度叩きました。

「もういいよ。目を開けてごらん、恐くないから」
「・・・あれ・・ほんまや・・・。こわくない!すごい、サンタさん!ありがとう!」
「どうやったん?」
「ただのおまじないじゃよ。『恐くなくなりますよーに』ってな」
「ふーん・・・」「すごいなぁ」
「さあ、目的地に到着じゃ。この袋をこの家の子達の枕元に置いて来ておくれ」
「どれがだれのかわからんよ」
「それぞれの子の写真を貼ってあるよ。よろしく頼むな」
「「はーい!!」」


「こうちゃん、これってこのこ?」
「うん、そうやと思う」
「ん。じゃあ、つぎやね。ここんち、おとこのこいてへんのかな?」
「どうなんやろ?おったらどうするん?」
「べつにどうもせんけど、おらんのんかなぁって」
「ふ〜ん」
「あと1コしかふくろのなかはいってないで」
「あっ、プラモデルや!おとこのこやで」
「あ、そやろなぁ」


「サンタさん!ぜんぶくばってきたでぇ」
「おかえり、ありがとう。さぁ、次の場所に行ってもう少し手伝って貰おうかの」
「「はーい」」


「「♪ジングルベール、ジングルベール、すずがなる〜〜〜」」

「「♪まっかなおっはっなっの〜となかいさーんが〜〜〜」」

剛と光一の楽しそうな歌声はソリが夜空を駆けている間、絶える事なく続きました。

「さあ、ここで最後じゃ」
「あれ?ここ、ぼくんち」
「つよしんちや」
「最後は君達2人じゃよ。ほい」
「・・・これなに?」
「今日のお礼も込めて、いつか2人に幸せを運んでくれる指輪じゃよ」
「このひかってるのん、いろちがうで」
「理由はそのときわかるよ。今日はありがとう」

サンタクロースは2人の頭を撫でてからその手で目を塞ぎ、

「おやすみ」
その言葉とともに、2人の意識は遠退いていきました。




翌朝、ダイニングには朝食のため2家族が揃って居ます。
ただ、少しばかり人数が少ないようで・・・・

「クリスマスの朝に2人がまだ起きて来うへんの珍しいね」
「ほんまやねぇ。まだ寝てるんかな?」
「去年なんか2人にみんな起こされたようなもんやったのに」
「そういえば、朝早うから家中駆け廻っとったね・・・。ちょっと様子見てくるわ」
「あ、私も行くわ」

母親2人が剛の部屋へ行ってみると、まだぐっすり眠ったままの2人の姿がありました。

「まだ寝てる・・・」
「でも、何で同じベッドで寝てるん、この2人は・・・」
「光ちゃん、寝ぼけて間違えたんかな」

自分達の子供を眺めながら、2人は可笑しそうです。

「手繋いで、幸せそうな顔して、どんな夢見てるのかしらね」


それは勿論サンタクロースと剛と光一、3人だけのヒミツです。